神聖なオリンピックで巨財をなした男だ、同情は無用である。==================記事内容====================
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100422-00000015-scn-cn
国際オリンピック委員会(IOC)名誉会長のフアン・アントニオ・サマランチ氏がスペインのバルセロナ市で現地時間21日、死去した。89歳だった。世界的にサマランチ名誉会長に対しては「功罪」ともにあったとする見方が多いが、中国では同名誉会長を称える論評が圧倒的だ。
中国人にとって、サマランチ氏は2008年の北京五輪開催に尽力した「恩人」だ。開催決定後にチベット問題などで中国批判が高まった際にも「五輪を利用して中国を非難すべきでない」などと、擁護に努めた。
新華社は22日未明、「サマランチ―
中国人民の古き友、思慕の心は失いがたい」とのタイトルで論説を発表した。「会長在任は21年間、最も五輪に貢献した人物であることに疑いはない」などと論評。1996年のアトランタ大会で、中国卓球のトウ亜萍選手に金メダルが授与された際のエピソードにも触れ、「サマランチ氏の表情は慈愛にあふれていた」などと記した。
新華社はその他にもサマランチ氏と中国の長年にわたる「深い縁」を列記。回想録でも「私は世界で多くの名誉学位や称号をもらったが、最も大事にしているのは、『中国の人々のよき友』と呼ばれるようになったことだ」と紹介した。
新華社以外の中国メディアも、「サマランチ氏が五輪に復興の道を歩ませた」、「中国のオリンピック招致に力強いアシスト」、「世界のスポーツ人が尊敬」など、同氏を称える記事を続々に発表した。
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◆解説◆
サマランチ氏の「功」は、何と言っても経済面での五輪の建て直しだ。1976年のモントリオール大会は大赤字。80年のモスクワ大会は西側各国がボイコットし、ソ連が国家の威信をかけて開催。IOCにとって84年のロサンゼルス大会が五輪再建の「正念場」になったが、サマランチ氏らはテレビ放映権やスポンサーで新制度を導入し、五輪大会を一挙に「黒字体質」に転換した。
一方で、巨額の金が動くようになったことで、不正も表面化。98年開催のソルトレイクシティー冬季大会招致では、IOC委員の不正な金品受け取りが発覚した。
五輪の「うたい文句」だったアマチュアリズムは後ろに追いやられた格好になり、各国国民が自国選手の勝利で日ごろの鬱憤(うっぷん)を晴らす側面がクローズアップされた。大衆の願望とスポンサー企業の思惑が、がっちりと結びついた。「勇気と感動」などの美辞麗句が氾濫(はんらん)するが、実際には五輪精神の希薄化と「ショー化」が進行した。08年の北京五輪は、戦前のナチス・ドイツによるベルリン大会並みの「国威発揚の場」だったとの声も根強い。
一方で、競技種目は依然として欧米起源のものが圧倒的に多い。近代オリンピックが欧米列強の帝国主義最盛期だった19世紀に始まったので、ある程度は仕方ないにしても、国際スポーツ界では今もなお、欧米中心主義が健在だ。個別の競技で日本などアジア系選手が活躍をみせると、ルールを改正するなどの現象も、しばしばみられる。(編集担当:如月隼人)